さぽろぐ

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2008年07月04日

カムイシンタラ

 6月28日札幌市・共済ホール
  国際シンボジュウム
 「救おう森のいのち・考えよう森の未来」




 森からの報告
 「神々の遊ぶ(カムイシンタラ)庭ー大雪の森」
      寺島一男氏(大雪と石狩の自然を守る会代表)

大雪山国立公園は、北海道の中央部にあって標高2000mを越える山々が集まる、面積22万7000haのわが国最大の国立公園である。複数の火山帯からなる複雑な火山地形は、変化に富んだ優れた景観をつくるとともに多様な環境を形成して、特徴ある多数の生き物を育んでいる。

とりわけ強風と多雪、ツンドラ並みの低温が支配する高山帯は、わが国随一の広さを誇り、永久凍土や周氷河地形が見られるほか、他に類を見ない大規模なお花畑や高層湿原が広がっている。そこには氷河期後の気温の変化に伴い、平地部では絶滅した動植物種が現在も生き残っている。北海道の先住民族であるアイヌの人々は、ここをカムイミンタラ(神々の庭)と呼んだ。

この高山帯とともに大雪山国立公園を特徴付けるものに、全面積の9割近く占める森林がある。森林は針葉樹林及び針広混交林を主体にした北方林で、大雪山は極東ロシアに水平分布する北方林がほぼそのままあるいは姿を変えて垂直分布する、北方林の生きた自然博物館とされている。
このしんりんはエゾヒグマ、クマゲラ、シマフクロウなど、北海道を代表する野生鳥獣が棲む重要な生息地になっているほか、北海道の母なる川石狩川や十勝側を生み出す、いのちの森になっている。

大雪山国立公園は、法的には種々の自然保護の網が多重に被せられた、わが国では最も規制の厳しい地域とされている。しかし、厳正に自然が保護されているところはごく一部で、その多くは未だ自然を損なう開発や利用の対象とされている。その最も著しい場所が森林地帯で、これまでにも国道・観光道路などの大型道路、巨大ダム、発電所、大規模スキー場、そのた観光施設が作られてきた。

大雪山の森林伐採は、1954年の15号台風の被害処理を契機に、林道が網の目のように延び機械化も一挙に進んで、国立公園の隅々までこ広がった。国立公園の保護レベルを決める地種区分は、レベルの高い特別保護地区と第1種特別地域が面積比で約3割しかなく、その場所も森林のない高山帯かそれに続く伐採に向かない急傾斜地が選ばれている。

レベルの低い第3種特別地域と普通地域は約6割を占め、ほぼ事由に森林伐採ができる施業地になっている。地種区分は、林業に有利な線引きになっており、森林生態系に配慮を欠いた森林施業体制とともに、大雪山の原生的な天然林を急速に失う一因となっている。

現在、大雪山国立公園の幌加地区やウタ種別シュベツ川沿いの第3種特別地域では、風倒処理に名を借りた木材収穫優先の皆伐が行われている。その現場は次世代を生み出す母体の表土が一面に剥ぎ取られ、瓦礫の斜面が剥き出しになるなど惨憺たる姿になっている。
伐採現場の渓流も、作業道の建設や流れ込む土砂の影響で著しい破壊が進行している。ここにはオショロコマが生息するなど河川生態系に与える影響も甚大である。この社撰な森林の取り扱いによって、目的とする森林の復元はきわめて困難にしただけでなく、周辺一帯の生態系に与える影響をより深刻化させる結果になっている。

自然の生態系と生物多様性が何よりも尊重されるべき国立公園で、このような深刻な事態が進行していることは、現行の国立公園の位置付けや森林施業のあり方、管理体制に構造的欠陥があることを示している。
大雪山国立公園は、ほぼ全域が国有地と公有地で、私有地は1%に満たない。地域制講演であっても営造物講演として管理が可能な国立公園である。管理体制を環境保全を第一義に一元化するなどシステムのあり方を検討するとともに、国際的な常識に合致する国立公園として昨日する関連諸法の改正など、抜本的な見直しが早急になされるべきである。

改めてそのために国立公園のあり方として、
国際的な常識に合致する国立公園とする。
1、環境保全のために存在することを明確に。(種の保存・生物多様性・自然生態系の保護を基調に、天然林の伐採をやめ保持図る)
2、地種区分の抜本的な見直し(管理体制の一元化と充実、地域制講演の欠陥を是正(大雪山NPー99%国・公有地ー営造物公園取り扱い))
3、法体系の見直し(自然公園法・自然環境保全法等の見直し)

森林の取り扱いは、森林施業・管理体制の構造的欠陥を是正すること。
1、国有林の見直し(存在意義と管理経営理念の見直し、地域を重視し航海・参加を原則に)
2、持続性原則の堅持(森林生態系の生産力・健全性を維持、森林の自然的・生態学的視点からの機能類型区分を)
3、天然林の取り扱い(すべての森林施業に生態系学視点を盛り込む)
をと提案しました。

*国際シンポジウムの講演を前に、大雪山国立公園内の国有林皆伐跡地の現地調査に入った米英の森林生態学者の皆さんは、「現場は保護対象の国立公園とは信じられない」「皆伐の実態は土砂が河川流域を破壊し、森林の再生は永久に出来ない状況だ」「環境や生物多様性・自然生態系など一切考慮されていない」など異口同音に、日本の国有林と国立公園内の実態に驚きを語りました。



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Posted by おだっちの菜の花油 at 23:06Comments(0)議員活動