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2008年07月27日

北海道自然保護協会

 北海道自然保護協会「森林環境税に関する要望・意見書」その1

 北海道は環境宣言を発表し、森林環境税について道内各地で説明会を行ってきました。しかし、その内容を見ると北海道の環境。森林の保全をすすめていく上ではまだまだ不明な点も多く、課題も多く残されています。
 北海道は9月議会に森林環境税について提出することを考えているとのことで、北海道自然保護協会は、6月6日に北海道に対して「森林環境税に関する要望・意見書」を提出し、道庁で記者会見を行っています。

 上ノ国町議会でも3月議会で、道町村議長会から森林環境税導入について、議会での議決要請があり、議会の申し合わせで、道町村議長会からの各議決要請案件については、議長を除く議員全員が提出者となることと、質疑討論省略で採択することになっていますので、私は「森林環境税」の導入には、幾多の問題点があることを述べて、提出者の1人にならないことを申し出し、裁決時前に議場を退席しました。

北海道自然保護協会が高橋はるみ知事に6月6日提出した「森林環境税に関する要望・意見書」を、全文掲載します。(北海道自然保護協会HP より転載)

 2008年6月6日 北海道知事 高橋はるみ様
           (社)北海道自然保護協会会長 佐藤 謙

     森林環境税に関する要望・意見書

はじめに
 北海道は、平成20年2月、知事の諮問機関である北海道森林づくり審議会の答申、「森林の保全と利用のための新たな施策と財源のあり方」を踏まえ、「北海道から始める新たな森林環境政策に関する基本的な考え方」を取りまとめ、5月19~31日にかけて全道各地において、その新たな政策の仕組みや「森林環境税(仮称)」の創設などに関する説明会・意見交換会を開催してきた。

 私たちは、いま林業が停滞し、産業としてなりゆかなくなる中で、一般民有林においても人工林が間伐などの手入れ不足になり、また皆伐地として造林されずに放置されている実情は理解できる。一方、北海道の荒廃した森林に対して種々の対策が必要である実情に対して、その対策費用としてひとり年間500円程度の「森林環境税」を他府県に倣って新設することも検討の価値があると思われる。すなわち、北海道による説明の各項目について、個々には理解できる面がある。

 しかし、北海道による説明は、北海道の森林全体に関わる問題に対する新たな施策とした森林環境税が一般民有林に特化されているので、上記二つの項目間に整合性が認められない。また、北海道の森林に関する現状認識とそれに基づく新たな施策の目的・方法・効果との間でも整合的な説明がなされていない。現在までの説明に基づく限り、森林環境税の新設を含む新たな施策について、提案の主旨は分かるが、以下に述べるように、北海道の森林環境に関する大きな疑問があり、道民を十分納得させる説明責任を果たしていない。北海道の森林環境に関する新たな施策を提案するのであれば、現状把握と問題分析に基づいた道民の論議を総合的に行うことが前提になる。

 したがって、私たちは、十分な論議が不足で、部分的な施策だけを示す現段階では、「森林環境税」と呼ぶ道民負担の導入について時期尚早と考え、安易に是認する訳にはいかない。
 ここに、私たちが問題視する理由を述べるので、貴職におかれては、道民に対して具体的かつ十分な説明を行った上で、北海道の森林環境に関する総合的な施策を改めて提案することを要望する。

1.新たな森林環境施策に関する説明
新たな森林環境施策に関する北海道による説明は、概ね、以下の流れのように要約される。
①北海道の森林は、約554万haに及び、国有林306万haと民有林248万ha(道有林61万haと一般民有林187万ha)からなるが、道民1人当たりの森林面積は約1haで、全国平均(0.2ha/人)の5倍に相当し、まさに森林王国「北海道」である。この森林は、私たち道民の大切な財産である。
 ②北海道の森林における多面的な公益的機能、すなわち水源かん養、土砂流出防備・洪水防止などの国土保全、生物多様性保全、さらにはCO2吸収などの公益的機能がある。これらの多面的な公益的機能を維持することが道民の義務である。
③一般民有林では、人工林が間伐などの手入れ不足になり、また無立木地として造林されずに放置されている森林が多い。公益的機能の発揮のため、一般民有林の管理が必要であるので、間伐と造林をしなければならない。
 ④そこに道民参加、道民の協働作業が必要であり、森林環境に関する教育「木育」の考えを道民に持っていただくようにする。
 ⑤その費用として、ひとり年間500円程度の「森林環境税」を新設し、5年を目途に73億円の基金をつくる。

2.現状認識に関する説明不足
(1)北海道の森林とその公益的機能
 約554万haに及ぶ北海道の森林は、北海道の説明とは別の区分をすると、山奥にある公有地、国有林と道有林の367万ha(約66%)と、人里に近い地域にある一般民有林187万ha(約34%)からなる。北海道の説明にあるように、北海道は「森林王国」ではあるが、公有の国有林と道有林の占める割合が非常に高いという、他府県と異なる特殊性がある。このことは、十分に説明されなければならない。

 森林の多面的な公益的機能は、当然、私たちが維持すべき大切な機能である。これらの機能は、一般民有林での発揮ももちろん必要であるが、上記の森林所有区分によると、はるかに大面積となる公有の国有林と道有林においてこそ果たされなければならない。
他方、北海道の森林は、上記の土地所有区分とは別に、天然林と人工林に区別される。両者は、上記の公有林と一般民有林それぞれにあるが、概ね、天然林は公有地において高い割合を占め、人工林が一般民有林の多くを占めている。

 以上のうち、公有地における天然林については、河野(2006)によれば、北海道の天然林伐採は日本全体の天然林伐採の86%におよぶ。このことによる生物多様性保全や国土保全、水源涵養などの公益的機能の損失は極めて大きい。また、公有地の人工林についても、公益的機能が重視されなければならないが、一般民有林と同様に放置され、間伐などの整備を必要とするものが少なくない。これらに対する施策についても十分な説明が必要である。
 さて、今回の森林環境税による、一般民有林における間伐などの人工林整備はそれなりの有効性をもつと思われるが、北海道において一般民有林の人工林だけを整備対象とすれば、北海道の森林の保全と整備は実現しない。このことについての説明が必要である。

 また、新しい森林環境施策を実施すると、9万炭素トンの削減が可能であるとのことであるが、2000年に道がたてた「北海道地球温暖化防止計画」の目標を実現するには、森林・林業部門では95万炭素トンの吸収が必要である。95万トンのうち、86万トンは国費補助事業の実施によるものであり、森林環境税によるものはわずか9万トンでしかない。

 以上のことから、公益的機能の項目ごとに、国有林、道有林および一般民有林それぞれのシェア部分を、それぞれ天然林と人工林に区別して数値で示すこと、それぞれの機能に関する対策費用も数値で示すことが必要と考える。一般民有林に使用するという「森林環境税」による基金73億円は、そうした総体的な枠組みの中で説明される必要がある。
 北海道による新たな施策に関する説明では、上記の北海道の森林全体にかかわる公益的機能を掲げながら、具体的な施策としては一般民有林における間伐や植栽に重点を置いており、山奥の国有林と道有林における施策に関して具体的な説明がまったく不足である。北海道は、「新たな森林環境政策」を標榜しているので、その説明は一般民有林に偏った内容に終始するならば明らかに不足となる。

(2)人工林と無立木地が多い理由
 現在、一般民有林だけではなく、国有林や道有林においても、手入れ不足の人工林と無立木地が多く認められる。それぞれに対策が必要と考えるが、諸対策は、まず、なぜ人工林や無立木地が多くなったか、それぞれの原因や歴史的背景を明らかにした上で講じられる必要がある。それがなければ、対策は根本的に満足できるものにはならないであろう。

  我が国の林業政策をひもとくと、国有林・道有林・一般民有林に共通する経緯として、
 第一に、40年も前の「拡大造林政策」によって大規模な天然林伐採が行われ、その伐採跡地においてカラマツやトドマツなどの人工林造成が一斉に行われたこと、
 第二に、開拓初期の無立木地は、自然条件下で風当たりの強い尾根筋や雪崩が生じやすい急傾斜地などにおける自然草原やササ原を指していたが、前述の天然林伐採と人工林造成が大規模に行われた中で、伐採後に局所的な気象条件や土地条件が悪化したため造林不能になった土地、「不成績造林地・造林困難地」が多数生じ、それも無立木地と称するようになった。
 これは、とくに山奥にある国有林と道有林に多く、一般民有林でも気象条件の厳しい道東や道北地域に多い現象であり、具体的には人為的な伐採後ササ原のままに経過した無立木地が増加したことが挙げられる。
 第三には、その後の林業が、森林の公益的機能が重視すべきとされた90年代からも、さらに従来の林業基本法から新たな森林・林業基本法に変わった今世紀になってからも、人工林植栽木の値段が低いことから、天然林伐採を進行させて伐採跡地を増やし、他方で、大面積にわたる人工林を放置してきたこと、
 第四に、最近では、外材や石油資源の高騰などの理由からバイオマス資源を関連させて人工林施業に目をむけるようになったことが挙げられる。
 一般民有林では、上記に加えて、
 第五に、北海道開発に伴って企業に払い下げた民有林が多いこと、
 第六に、バブル期における林業以外の目的を持った林業者以外の人々による投資型所有が進んだこと、
 第七に、林業者でも個人の利益を優先することから人工林でも天然林でも皆伐したまま放置する例や、森林補助金などを利用するために天然林(二次林を含む)を伐採して造林する例が生じたことが挙げられる。

 最近では、人里に近い一般民有林が急速に伐採され続けているが、それは、外材高騰による紙資源の枯渇などに対応していると判断される、第八の、近い過去の経緯である。このように、人工林や無立木地が増えた理由は、過去の林業政策・過去の経緯にある。以上の経緯は、一般民有林の指導をすべき行政、国および北海道の林業政策に起因している。

 なお、一般民有林における無立木地は、過去から使用されてきた「不成績造林地や造林困難地」であるというより、多くが森林所有者の経済的判断による「未造林地」と言え、古い時代から継続した無立木地とは意味合いが異なる場合が多い。

 以上のように、放置された人工林と無立木地がなぜ多くなったかの理由は、過去の林業政策の欠陥が基本にあり、公有の国有林・道有林と一般民有林ではそれぞれ、異なる原因も加えられる。したがって、国有林、道有林ならびに一般民有林それぞれにおける現状を把握し、それぞれの原因を明確にし、それぞれ異なる緻密で具体的な対策を講じる必要がある。新たな森林環境政策を進めるとする北海道は、以上の点に関する説明を包括的にかつ十分に行う必要がある。

3.公益的機能発揮のための流域管理に関する説明不足
 新たな森林・林業基本法、北海道森林づくり条例、北海道森林づくり基本計画などにおいて、森林の多面的な公益的機能の発揮のために、国有林・道有林・一般民有林の土地所有の枠を超えて、「流域管理」を行うことが謳われている。

 水源かん養機能や、土砂流出防備や洪水防備などの国土保全機能、生物多様性保全機能などは、人々が生活する場の上流域すべて、河口から源流までの流域全体を管理して初めて成り立つのである。したがって、北海道の説明は、新たな森林環境政策が必要な理由として多面的な公益的機能を掲げているが、流域全体における対策、とくに山奥における対策を十分に説明していない。そのため、土砂流出防備対策や洪水対策を一般民有林にだけ負わせるような北海道の説明は、欠陥があると言わざるを得ない。

 そこでは、一般民有林が多い他府県において民有林対策として効果を上げつつある「森林環境税」の仕組みを、流域上流部・山奥に公有の国有林や道有林が多い北海道に、北海道の現状認識を不十分なまま、そのまま導入しようとした姿勢が問題視される。北海道の説明では、公益的機能重視や流域管理に連動した新たな森林環境施策を講じるとしながら、それらに関して緻密な検討がなされていないのである。


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Posted by おだっちの菜の花油 at 18:52Comments(0)

2008年07月27日

北海道自然保護協会


 北海道自然保護協会「森林環境税に関する要望・意見書」その2

4.「山のみち(旧大規模林道、旧緑資源幹線林道)」の中止が先決事項である

(1)森林の多面的な公益的機能を大いに損なう、過去の負の遺産である開発計画
 林野庁は、40年も前の拡大造林政策を前提に立案され、今では「時代の変化」でまったく意義を失ってしまった「大規模林業圏開発計画」の大規模林道(その後、緑資源幹線林道、山のみちと名称変更)の整備を延々として継続し、緑資源機構が廃止された現在でも、北海道への補助事業として「山のみち」の整備を継続しようとしている。

 この事業は、北海道では長大な3路線が計画され一部の区間で工事が進められているが、最も大きな問題の一つは、近年の新たな森林・林業基本法に示された理念、多面的な公益的機能重視や流域管理にまったく合致せず、逆に、山奥の国有林や道有林を中心に、水源かん養や土砂流出防備、生物多様性保全などの公益的機能を大いに損なうことである。

 具体的には、多数の峰越し林道の掘削により、流域源流部の天然林が伐採され、水源かん養機能や生物多様性保全機能を失い、土砂流出や洪水などを促進させる危険性が大きいので、公益的機能重視や流域管理にまったく逆行する行為となる。山のみち事業は、我が国が決めた森林環境の維持理念に反する時代遅れの開発計画なのである。

 今年度から事業主体となる北海道は、現在、「山のみち」を検討中であるが、私たちの質問に対する今までの回答では、「国の補助事業であるから北海道だけでは判断できない、3路線全体ではなく各路線の中の区間ごとに検討する」などと回答して結論を出していない。北海道は、新たな森林環境政策として「森林環境税」などを言い出すのであれば、その前に、北海道の山奥にある森林を荒廃させ、公益的機能を大いに損なう「山のみち」事業の完全廃止を宣言することが先決である。

(2)道費など道民の負担金が大きい、無駄な公共事業
 大規模林道から始まった「山のみち」事業は、長年、国として莫大な費用を支出し、北海道も応分の道費負担金を支出してきた。この事業は、前項で述べた公益的機能重視に反することなどを考え合わせると、明らかな税金の無駄遣いであった。
 将来を考えると、この事業は、車道としての規格が低レベルにあるため壊れやすく、建設による影響だけではなく完成後にも公益的機能に影響を及ぼし続ける危険性が高い欠陥がある。実際、日高管内において完成部分の法面崩壊が著しかった事例がある。

 また、この事業は、事業者が車道建設だけを行い、その後の維持管理を地元市町村に任せるという、「造りっぱなし」の仕組みであるが、区間の中で短距離の車道が完成する都度、地元市町村に移管されるため、完成後の地元負担が非常に大きくなるという欠陥がある。したがって、普段使用するとは思われない車道を移管された地元市町村は、維持費や改修費の負担に困ることが目に見えるようである。

 山のみち事業は、建設費用だけでも、新たな森林環境施策として北海道が提案する森林環境税の税収(5年で73億円)を遙かに超えるものと予測される。今年度から新たな事業主体となる北海道は、何よりも先に、山のみち事業に関して今後必要とされる莫大な道費についても道民に十分説明すべきであるが、山のみち事業は、道税の支出面からも大きな無駄遣いであるので、北海道は森林環境税を述べる前に、山のみち事業の廃止を宣言すべきである。

5.国有林と道有林における不適切な森林施業の反省を先行すべきである
 国有林と道有林において、現在でも、近年の新たな森林・林業基本法などの理念、公益的機能重視や流域管理に合わない不適切な森林施業が続けられている。

 北海道森林管理局では、例えば大雪山国立公園で風倒木処理と称して大規模な伐採を行い、その作業に伴って渓流を土砂で埋め、あるいは檜山では天然林施業と言いながら、計画を大幅に上回る過剰伐採を行い、さらに国有林外に越境して誤伐を行うなど、不適切な森林施業が目立っている。また道有林では、「木材生産を目的とする皆伐・択伐を廃止」と言いながら、「えりも」では「受光伐」の名目で大面積の皆伐を行うなど、不適切な森林施業が露呈している。
 そして、これらが社会的批判をあびると、国有林も道有林も素直に誤りを認めず、「適正な森林施業であった」と強弁を繰り返すのが実情である。

 現在の森林・林業政策に携わる林野庁・北海道森林管理局と北海道は、現状のような不適切な森林経営をきっぱりと止め、模範となる森林管理・林業経営を行う姿勢に転じない限り、一般民有林における行政からの指導も立ちゆかなくなることは明白である。
 北海道における新たな森林環境施策を述べるのであれば、山奥にある国有林・道有林の現状を科学的に認識し、公益的機能重視とは異なる森林施業の実態を把握し、種々の反省を明記した上で、新たな総合的な森林環境施策を示し、その枠組みの中で、人里に近い一般民有林の問題点と解決策を示すべきである。

6.「森林環境税」導入は、既存の仕組みによる森林環境政策との関係を十分に説明し、使途と効果を明示すべきである
すでに2(1)で触れたように、
 現行の法令に基づく森林環境施策に関して、十分な説明が必要である。なぜ、一般民有林に対して73億円の基金を設けなければならないのか、なぜ、既存の法令により一般民有林の荒廃を止めさせ、その後、公費による対策ができないのか、十分な説明がなされてない。

 そのため、北海道は、山奥の国有林と道有林における人工林間伐や造林事業を含む事業費を説明した上で、人里に近い一般民有林に関する費用を既存の仕組みからは出せない理由を明示すべきである。
 他方で、既存の仕組みによる国有林や道有林での間伐事業・造林事業の効果を明記した上で、森林環境税で行う一般民有林での効果を十分に説明すべきである。国有林と道有林における人工林の間伐作業において、しばしば公益的機能重視に反する今の経済的事情に基づく伐採が行われている。そのため、間伐作業の効果に関して、方法と結果の良い事例を示すべきである。

 森林環境税による5年間の税収入の見込みと支出予定が「基本的な考え」で明記され、税収入としては約73億円が予定されている。また支出では人工林間伐には20億円、無立木地への植林には40億円、1人30本の植樹運動には10億円、そして森林づくりに対する道民意識の醸成には約3億円が予定されている。
 しかしながら、人工林間伐や無立木地植林の地域の選定とその公益的機能に及ぼす効果、一人30本(対象道民を300万人とすると、9000万本)植樹を具体的にどのような考えで行うか、どの現場に使用するのかなど、十分に説明すべきである。

 今回の事業の中心は市町村が担うことになっているが、市町村が十分にその役割を果たすことができるのか、道民から多くの疑問が出されている。道民からの税金が効果的に使われる見込みがあるのかについても十分吟味した説明が必要である。諸物価が高騰し、道民は厳しい生活が続いている中で、新たな税に関して、北海道の説明責任が強く求められている。

7.人工林の間伐作業や無立木地の造林を行うには、多面的な公益的機能の発揮や、真の
  自然再生を考えた方法を明記すべきである。
(1)人工林の間伐作業
 国有林や道有林における人工林施業の実態をみると、例えば、ほとんど人工林に被われる流域すべてを対象にしたため、皆伐ではなく間伐作業であってもその流域における土砂流出を著しくした例、また、高い林齢の人工林に多いが、人工林における希少生物の生息地・生育地を皆伐や間伐によって失った例など、流域管理、そして森林の国土保全や生物多様性保全などの公益的機能の発揮の観点から、それらをまったく考えない施業例が少なくない。そこでは、間伐作業を作業効率・伐採費用軽減など、従来の木材生産・林業の観点だけから間伐を行った欠点を指摘できる。

 北海道による説明では、「手入れ不足の人工林における間伐作業が木材の育成やCO2 吸収能の増進のための間伐」がすべて善であるかのように、無批判に記されている。しかし、従来からの方法では、間伐作業であっても、いま重視される多面的な公益的機能の発揮に反し、その損失(自然破壊)を新たに引き起こす危険性がある。とくに、今回の新たな施策のように、一般民有林を対象に大面積にわたって短期間に行う間伐作業については、単純には同意できず、多面的な公益的機能の発揮を伴う、緻密な方法の検討が必要である。
 北海道の説明は、本来、公益的機能が発揮できる人工林施業の間伐方法について緻密な検討をした上で、間伐の包括的な方法を説明に明記し、それを森づくりや「木育」として道民に周知させるべきである。

(2)無立木地の造林作業・森林再生事業
 北海道は、「造林、森林再生すべてについても善であるかのように」無批判に説明している。しかし、現状の造林や森林再生事業においてしばしば認められる欠点、とくに生物多様性保全の観点からの欠点をここに指摘する。北海道は、その指摘に対して十分説明する責任がある。
 実際の造林、森林再生事業では、自然の分布限界を超えた樹種の植裁や、在来種であっても遠方に由来する遺伝子が異なると推測される樹種の植裁が行われる例が少なくない。また、一般民有林における北海道の補助金事業として、二次林や天然林を伐採した(無立木地を造った)上で造林するといった例も認められる。
 これらの事例は、木材生産の観点が重視された行為であるが、公益的機能の一つである生物多様性保全にはまったく反する行為となる。

 今後の造林や森林再生の事業では、生物多様性保全の観点を重視すべきである。例えば、無立木地に残された野生の樹種(稚樹・若木や萌芽など)はそのまま残し、その付近から得た種子から苗木を育て、同一種であっても遠方由来の種子や苗木は使用しないことが肝要である。また、在来樹種からなる森林は、二次林であってもそのまま残すことが自然林・天然林を目指す森林再生にとって最も早いアプローチとなる。

 したがって、造林や森林再生においても、林業の専門家だけではなく、基礎的な生態学や生物学などの専門家を加えた緻密な方法の検討が必要である。また、自然再生に関する考え方が多く公にされているので、それらを踏まえた新たな造林方法の検討と、道民に対する説明が必要である。北海道のいう「木育」には、単純に「造林や森林再生すべてが善」という教育ではなく、生物多様性保全に合った造林や森林再生の包括的方法を周知させることが必要である。
 以上、人工林の間伐作業、そして無立木地の造林・森林再生事業に関して、最初に、公益的機能重視に即した包括的な方法を考えるべきであり、北海道はそれを道民に十分に説明すべきである。

(3)熱意ある植樹運動の重要性
 現在、無立木地への植樹活動など、森林を再生させる熱心な森林ボランテア活動を行っているNPOが少なくない。そこでは、寄付金などに基づいた活動として、公的資金が補助されない場合が多い。私たちは、森林再生の諸活動が盛んになることについて重要だと考えており、新たな税金とは別な、公的資金による「道民の協働作業と木育」を進めていただきたいと願うものである。ただ、それは、前述(1)と(2)を前提とするのである。


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Posted by おだっちの菜の花油 at 16:57Comments(0)