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2009年12月27日

効果巡り評価二分

   各地で魚道設置 効果巡り評価二分 /北海道


   ◇「遡上少ない」と不信感
 ダムや堰(せき)による河川環境の分断を解消しようと、各地で魚道の設置が進んでいる。事業凍結中のサンルダム(上川管内下川町)では、北海道開発局がサクラマスなど魚類の保全策として、全長約9キロという全国最長の魚道を提案、保全策の検討を託された専門家会議も追認した。

 だが、自然保護団体は「魚道で保全に成功したダムはないのに、専門家会議は魚道ありきの議論に終始した」と批判する。魚道への疑問の声が上がる各地の現場を訪ね、不信の原因と解決策を探った。【横田信行】

   ■せたな・須築川
 「産卵期に川に入ると体にぶつかるぐらいの大量のサクラマスがいたが、ダムができた途端、姿を消した。河口では海藻の森が消え、貝も激減した」
 檜山管内せたな町の漁師は、須築(すっき)川に69年にできた砂防ダムによる深刻な影響を訴える。ダムの高さは10メートル。ダムによって土砂が供給されなくなった下流では、河床低下や川岸の「洗掘」が起き、河畔林の崩壊も進む。

 ダムには魚道があるが機能していないため、サクラマスが激減したとされる。管理する函館土木現業所は地元のひやま漁協に魚道の改築を提案したが、拒否された。斉藤誠副組合長は「漁業資源をどれだけ回復できるかの説明がないので同意できなかった。本音はダム撤去。防災上無理なら昔の状態に近づけてほしい」と語る。

 魚道改築を巡っては、漁協側はダムに切れ込みを入れる「スリット化」を求めていた。しかし、函館土現は譲らず、漁協側は「やむを得ない」と判断し4月、改築に同意する意向を示した。しかし、11月に撤回し事業は着工直前で白紙に。土現はスリット化の検討を始めているが、「費用がかさむうえ、工事による濁りが他の漁協の海域に及ぶ恐れもある」と消極的だ。

 道南を拠点に活動する自然保護団体「流域の自然を考えるネットワーク」は「魚道改築では資源の回復は見込めない」と指摘する。

   ■今金・後志利別川
 後志利別(しりべしとしべつ)川の美利河(ぴりか)ダム(檜山管内今金町)では05年、開発局がダム直下からダム湖を迂回(うかい)し、支流のチュウシベツ川に合流する全長2・4キロの全国最長のバイパス式魚道を設置した。

 一部が階段状で、大半は石を敷き自然の川に近づけたほか、疲れた魚が休憩できる「待避プール」などさまざまな工夫も講じ事業費は20億円に上った。

 須築川と同様、後志利別川もダム建設前はサクラマスが数多く遡上(そじょう)していたとされる。しかし魚道設置後、遡上を示すダム上流の産卵床は06年は2個、07年はゼロ。08年は13個に増えた一方、想定外の魚道で33個、産卵に適さない下流で120個確認された。魚道内の分布調査で捕獲された幼魚は、08年は計1700匹と05年の計177匹から増えたが、親魚は05年と08年に各5匹だった。

 函館開発建設部は「サクラマスだけでなく他の魚類も増えている。(遡上数への)評価は専門家に委ねたい」と話す。こうした中、魚道を3・6キロ延長し本流の後志利別川にもつなぐことを計画しているが「現段階では実施するかどうかを含め検討中」としている。

   ■深川・石狩川
 旭川市周辺の石狩川では、かつて年間1万匹のサケが捕れた。そのサケが姿を消した原因とされるのが、農業用取水堰「花園頭首工(とうしゅこう)」(深川市)だ。ここにも魚道が00年に設置されたが、機能が疑問視されている。

 石狩川開発建設部は魚道の機能確認のため00~07年、産卵期に捕獲調査を計18回実施したところサケは47匹、今年は7匹にとどまった。開建は近く改善点を公表するが、改善の実施時期は未定だ。

 独立行政法人「水産総合研究センターさけますセンター」は今年から毎年50万匹の稚魚の放流を始めた。改善を求めてきた旭川市の自然保護団体「大雪と石狩の自然を守る会」は「放流から戻ってくる3年後、魚道を上れないサケが大量発生するのでは」と心配する。

   ◇「免罪符にするな」 事前・事後の調査を--弘前大准教授
 行政は「遡上した」事実をもって魚道を過大評価するのに対し、自然保護団体などは数の少なさから過小評価する。

 公共事業としての魚道の費用対効果を客観的、科学的に評価する“物差し”がないため議論はかみ合っていない。市民団体の招きで10月に花園頭首工などの魚道を視察した弘前大の東信行・准教授(生態工学)に、魚道をどう評価し、河川全体の環境改善へつなげていくか聞いた。
     
 魚道があるのとないのとでは大きな違いがあるのは認めざるを得ないが、実際は次善の策や緩和技術にすぎず、ダムや堰による環境改変の免罪符に使ってはいけない。

 行政は水理学など工学的な視点に偏りマニュアルのまま安直に造るのではなく、生態系・流域環境への配慮や河川に合わせた自由な設計思想、細かな工夫こそ求められている。

 魚道は造って終わりではなく、事前・事後の調査が重要。事業者やかかわった専門家は責任ある対応をすべきだ。効果を評価する前提となるダムや堰の建設前の魚類などの資源量を調査したうえで、建設後は魚道下流に集まった数とそのうちどれだけの個体が遡上したか、降河すべきものがどれだけ無事通過できているかなど、科学的に評価できる内容の調査を数年以上続けるべきだ。

 ダムや堰がもたらす問題の根本的な解決には、客観的な評価を踏まえ、官民で一緒に、魚道のみに頼らずさまざまなオプションを検討し、同意を得る議論をすることが必要だ。(談)

    (12月27日/配信 毎日新聞)




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Posted by おだっちの菜の花油 at 16:54│Comments(0)
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