放射性物質の拡散予測、新たに75のミス
放射性物質の拡散予測、新たに75のミス
原子力規制委員会が放射性物質拡散シミュレーションを何度も訂正した問題で、規制委事務局の原子力規制庁は13日、シミュレーションを総点検してやり直した結果を公表した。
北海道電力泊原発(北海道泊村)で降雨量のデータを10倍にするなど、全17原発で計75のミスが判明した。規制庁は同日、ナンバー2の森本英香次長ら幹部3人を口頭による厳重注意処分とした。
規制庁によると、東京電力福島第一原発を含む17原発のうち、泊原発と、既にミスが明らかになっていた九州電力の玄海原発(佐賀県玄海町)、川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の3か所は大幅な訂正となった。
泊原発では、規制委から委託された独立行政法人原子力安全基盤機構(JNES)が、1時間当たりの降雨量を0・1ミリ単位で入力すべきところを誤って1ミリ単位で入力した。
再計算の結果、拡散距離は全体的に短くなり、放射線量が避難基準に達する最も遠い地点は倶知安町(原発から19・9キロ)から共和町(同15・2キロ)になった。
玄海、川内原発では、九州電力が誤った風向データをJNESに提供し、拡散方向が180度変わった。
その結果、同様に最も遠い地点は玄海原発では佐賀県唐津市(同27・4キロ)から長崎県佐世保市(同29・1キロ)、川内原発では鹿児島県阿久根市(同21・1キロ)から同県いちき串木野市の沖合(同21・1キロ)になった。
ほかの14原発で大きな訂正はなかったが、気象データや計算用の変換コードの入力などでミスが多発し、避難基準に達する地点に一部の自治体が新たに含まれたり、外れたりした。
原因について、規制庁は、業務をJNESに丸投げした上、規制庁にチェック体制がなかったこととした。
同庁によると、拡散予測は、原発周辺自治体の要請で防災計画の策定に必要な基礎資料と位置づけられ、今年8月、規制委の前身である原子力安全・保安院は予定になかった方位別の予測を行うよう方針を変更。大量のデータ処理が必要になったが、9月に保安院から業務を引き継いだ規制庁は、体制を見直すことなくJNESに作業を急がせた。
読売新聞 12月14日(金)11時57分配信
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