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2009年05月01日

北海道の「里」にある自然

 北海道の「里」にある自然と生物多様性(1)
    佐藤謙北海道自然保護協会会長
        (NC HOKKAIDO2009年3月NO141号より)

はじめに

 従来、自然の守り手は、自然性の高い地域や希少種に富む特異な地域、主に高い標高地にある「自然域」を選定して保護・保存してきた。自然環境保護法、自然公園法、文化財保護法、鳥獣保護法など各種法令に基づく保護地域は、非森林植生に被われる「自然域」に限られる傾向が強く、森林植生が相対的によく残された自然域と林業域は国有林が管理し、さらに低い標高地(農業域と都市域)は民有地となるため、相対的に低い標高地では「生物多様性の保全」はなかなかすすまなかった。

 生物多様性条約を批准後の1990年代から、我が国では一次産業にかかわる法令「生物多様性保全」の理念が組み込まれてきたが、近年、環境省の重要な政策の一つとして「里地里山の保全」が掲げられている。
 この全国的に展開中の動きは、従来、注目されてこなかった低い標高地の自然・生物多様性を保全しようとする点で評価できるが、自然再生と同様に、真に「保全」や「再生」になるのか、この動きに関して厳密なチェックが必要である。

 「里地里山」とは、環境省自然環境局(2008)によると、都市域と原生的自然との中間に位置し、様々な人間の働きかけを通じて環境が形成された地域であり、集落をとりまく「二次林(里山)」と、それらと混在する「農地、ため池、草原等(里地)」で構成される地域概念である。実際には、二次林 の他に「自然林、人工林等」も含まれると考えられるが、その中核部分が「二次林」とされる。
 しかし、以上のうち、里山概念は、後述するように、北海道の実態にまったく合わない。したがって、北海道における人里に近い地域の自然・生物多様性の保全に関しては、北海道独自の保全目的と方法の吟味が必要である。

 北海道の「里」にある自然

北海道における二次林

 北海道の二次林には、第一に、カバノキ科カンバ属(ダテカンバ・シラカンバ・ウダイカンバ)やヤナギ科ハコヤナギ属(ヤマナラシ・ヤマナラシ・ドロノキシ)などの陽樹からなる一斉林がある。これは、全道に見られるシラカバ一斉林で代表されるが、林冠の樹齢・樹高が揃っており、皆伐や山火事の跡地、あるいは耕作放棄地に一斉に種子が散布され、種内競争によって間引きされながら成林した森林(山火再生林など)である。その林床ではクマイザサが密生し、草花が少ない場合が多く、全体的に野生植物の種数や個体数が少ない傾向が認められる。

 第二に、カシ属コナラ亜属(ミズナラ・コナラ・カシワ)のように伐根から芽を出す萌芽性のある樹種は、山地帯・冷温帯の自然林構成種であるが、伐採が繰り返されるにつれて顕著に優占するようになり、二次林を形成する。
 ミズナラ二次林は全道に、コナラ二次林は空知・石狩・胆振・日高・十勝地方に、そしてカシワ二次林は海岸地帯の他に石狩・十勝地方などに認められる。しかしながら、これらの萌芽再生林は、伐採・萌芽後の時間経過に伴って群落構成種・樹高などが自然林に近い場合やほとんど自然林と見なされる場合が生じる。

 北海道の二次林は、放置されるとどうなるか?ミズナラ・コナラ・カシワの萌芽再生林は、現在でも、低い標高の生産活動域における野生生物の生息地として重視される。この森林は、自然のまま放置しても比較的短い期間(50年ぐらい)でさらに多様な生物が生息できる自然林に推移(遷移)すると考えられる。
 植生自然度でいうと、8から9へ推移する。他方、シラカバ二次林については、放置されたままで自然林へ推移する(植生自然度7から9へ)との環境省の説明がある。しかしながら、カンバ属の陽樹一斉林・山火再生林は、コナラ亜属萌芽再生林と比較すると、野生植物の種数・個体数が少ない状態にあるため、自然林まではより長期の100年~300年かかると予測される。



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Posted by おだっちの菜の花油 at 10:39│Comments(0)環境・自然
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