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2010年06月30日

すべては曖昧なまま重要な政策決定がなされてきた



    すべては曖昧なまま重要な政策決定がなされてきた

 今度の消費税増税の是非論もそうだ。鳩山前首相の抑止力の重要性に気づいたという発言もそうだ。少し前には小泉元首相の郵政改革で国民の信を問う、というのもあった。

 彼らは本当に物事がわかってそう言っているのか。突き詰めた議論の末にそのような政策決定を行なっているのか。

 そして我々国民はそれらの議論を十分に理解し、納得した上でその政策の是非を判断しているのか。

 決してそうではない。
 「やっぱりムードに流されることなく論理的に納得したい」

 そう言って作家の鴻上尚史(こうかみしょうじ)が週間スパ7月6日号にいいことを書いていた。

 彼はまずポツダム宣言を受け入れるかどうかの決め手となった国体維持という問題について、国体とは何かについて指導者たちの間で意見がバラバラであったという歴史的事実を次のようにわかりやすく書く。

 読者の皆さんはこんなふざけた事が当時の指導者の間で行なわれていた事を知っていただろうか。そして今も同じような事が繰り返されているのだ。

・・・戦後、歴史家が明らかにしてくれたことですが、ポツダム宣言を受け入れるかどうか会議を続けていた時、「(ポツダム宣言を)受諾したら国体は護持できるのか?」という議論がえんえんと続いていたという冗談のような事実がありました。
(それまで)ずっとスローガンのように「国体護持!」と(皆が)叫んでいたのですが、「天皇の権限をどこまで制限されたら国体は危機に瀕するのか?」という議論(をきっかけに、そこ)から、「つまり、国体とはなにか?」というテーマがあぶりだされて来たのです。
 で、政治家も軍人も、はたと困惑したと言います。
 つまりは、ムードから、リアルな検証に入った時、じつは一回もそういうこと(検証)をしてなかったと人々は気づいたのです。
 そして、えんえんと議論している時間に、特攻隊は出撃し、何万人という兵士と民間人が死んだのです・・・

 ついでに言えば、その間に広島、長崎に原爆も落とされる羽目になったのだ。もはや勝ち目はなかった事を当時の指導者はみな知っていた。潔くポツダム宣言を受け入れていたら国民の犠牲は少しは食い止められたのだ。

 そして鴻上氏は、普天間問題を例にとり、「僕はもう、ムードではなく論理的に納得したいのですね」、と言って次のような問題提起をしている。

  ・・・太平洋および極東アジアの平和を守るために、沖縄に米軍海兵隊を置くことが「抑止力」としてどのように有効なのか。

 社民党は「沖縄の海を汚すなというが、ならばサイパンやテニアンの海は汚していいのか。

 そうではなく、社民党の論法としては「沖縄に米軍を置くことは、抑止力とは何の関係もない」と言うことを証明する必要があったのではないか。

 逆に、もし抑止力として日本に米軍海兵隊が必要ということが本当なら、国外移設を叫ぶ事は無責任ということになる。

 世界に駐留する米軍海兵隊の99%が日本にある。しかも在日米軍の駐留経費の75%を思いやり予算で負担している。ドイツの30%と比べても多すぎる。

 つまりアメリカは世界のどこの国よりも日本に海兵隊を置いたほうが経済的に好都合だ、それが日本に海兵隊の基地を置き続けたいというのが米国の本音だ。

 こういう専門家の解説もある。それは本当か。本当ならばこんな馬鹿らしいことはない。

 一体どれが本当なのか。徹底的に「抑止力」に納得しないと、あまりにも沖縄に申し訳ないと思う・・・


 どうだろう。この鴻上氏の問題提起はその通りではないか。そしてそれはすべての重要な政策について言えるのだ。

 「抑止力」の真偽については、鳩山前首相は「わかった」とあっさり言って終わりにした。しかしいまだに誰も納得していない。本当のことはわからない。それどころか意見が真っ二つに分かれている。

 もっと言えば「いまでも日米同盟は必要なのか、日米同盟を深化させることは本当に日本の為なのか」という根本的な問いに対し、議論を深めるいい機会だといいながら、誰も議論をしようとしない。

 みな議論を避けている。逃げている。それでいて政策がどんどんと既成事実化していく。

 そんな世の中の欺瞞に挑戦状を突きつけるつもりで書いた「さらば日米同盟」(講談社)であるが、まるで黙殺されているかのようだ。

 しかし、私は心配していない。そのうち嫌でも日本国民は日米同盟の是非を議論せざるを得なくなる時がくる。

 逃げようとしても逃げる事はできない。「さらば日米同盟」が争点になる時が必ず来る。
 
(2010年06月30日 提供:天木直人のブログ)




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Posted by おだっちの菜の花油 at 15:18│Comments(0)
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