2010年06月30日
財政再建と成長の両立、市場は「ノー」
財政再建と成長の両立、市場は「ノー」
金融市場で再び動揺が広がっているのは、前週末に開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議(金融サミット)が、先進国の財政再建を打ち出したのがきっかけだ。
各国の緊縮財政で世界経済が失速するとの不安感から、マネーが“安全資産”に逃げ込んでおり、市場は「ノー」を突き付けた。菅直人首相が掲げる財政再建と経済成長を両立させる「第三の道」にも市場は不信認を突き付けている。
「景気がよくないのに、緊縮財政を打ち出すなんて…。株式市場からマネーが逃げていくのは当然だ」。市場関係者は怒りの声を上げる。
G20サミットは27日に日本を除く先進国が2013年までに財政赤字を半減させる目標で合意。例外の日本も20年度までに基礎的財政収支を黒字化させる目標を説明し、“国際公約”となった。
各国が財政再建へとかじを切ったのは、欧州財政危機を契機に、市場が財政破綻(はたん)という「ソブリン(公的債務)リスク」への警戒感を強めたためだ。
ところが、市場に促されたはずの財政再建路線が、市場を動揺させるという皮肉な結果になった。市場は「財政再建を急ぐのはまだ早い」と警告。経済失速の影響を受ける株式から国債や円へと避難している。
国債が買われ、長期金利が急低下したのは、「財政健全化を評価したのではなく、景気悪化で金利がさらに低下するとの思惑にすぎない」(アナリスト)。
円高も、「財政危機による信用不安が続く欧州や、雇用を中心に景気回復ペースが鈍化してきた米国よりはマシ」(エコノミスト)という消去法で選ばれただけだ。
その日本も、5月の失業率が3カ月連続で悪化し消費は低迷したままで、デフレ脱却の道筋はみえない。5月の鉱工業生産が自動車の輸出の鈍化で3カ月ぶりに低下するなど、頼みの企業部門にも不安材料が出てきた。さらに円高が輸出企業の業績を圧迫し、景気が腰折れする可能性も否定できない。
クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミストは「(緊縮財政では)景気対策の手足を縛られ、景気が悪化した際に有効な対策を打ち出せない可能性がある」との懸念を示す。
しかも菅首相は「増税しても使い方を間違えなければ、成長は可能」との持論に基づき、消費税率引き上げ論議をあおっている。
市場には消費税増税による財政健全化を評価する声は多い。だが、第三の道に対しては、「増税分を介護や健康などの分野に投入するというのは成長戦略ではなく、単なる社会保障政策」(エコノミスト)と両立に懐疑的だ。
参院選で有権者の審判を受けるだけでなく、市場の信認を獲得することが急務だ。(川上朝栄)
(6月30日22時37分配信 産経新聞)
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Posted by おだっちの菜の花油 at 22:49│Comments(0)
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