2011年09月29日
津波対策報告 震災の教訓を実践に生かそう
津波対策報告 震災の教訓を実践に生かそう
巨大津波の襲来になすすべのなかった手痛い経験を、教訓として生かさねばならない。
東日本大震災を受けて政府の津波対策を検討してきた中央防災会議の専門調査会が、報告書をまとめた。
政府や地方自治体に、「あらゆる可能性を考慮した最大級の巨大地震・津波」を前提として防災対策を取るよう求めている。
旧来の防災対策に、猛省を迫る内容と言えるだろう。
東日本大震災では、防潮堤が各地で無残に壊れた。津波警報は予測精度に問題があり、逃げ遅れた住民が津波に次々にのまれた。死者・行方不明者は2万人近い。
政府が、この地域で想定していた被害の10倍近くに及ぶ。
これまで政府は、「最大級」への対応に腰が引けていた。大規模な防災対策に巨額の予算がかかるためだ。「社会的合意を得るのは容易でなく、過大な対策となる可能性があった」としている。
津波想定に対する考え方を根底から変えねばならない。
報告書は、防潮堤などの施設を強化するハード面と、避難などソフト面の両方を組み合わせた対策が大切、としている。
もっともな指摘だ。海岸線に防潮堤を築くには限界がある。
防潮堤で、まずは津波を食い止める。巨大津波が乗り越えてくる場合に備え、迅速かつ確実に住民たちが避難する。それによって被害を最小限にする。
難しいのは、「最大級」をどう定めるかだ。
政府は、数千年単位の過去まで遡って地質などを調べ、どんな地震が起きるかをまず検討するという。これに海岸地形を加味し最大津波を決める。膨大な作業となるが、急いでもらいたい。
当面は、来夏までに、関東から九州まで広い範囲で津波被害が懸念されている東海、東南海、南海の三連動地震で結論を出す。
しかし、それを、ただ待っているわけにはいかない。政府や自治体は、現行の対策の不備を抜本的に見直すべきだろう。
内閣府によれば、国内の海岸に面した653市町村のうち、津波の被害予測を記述した「ハザードマップ」を作成しているのは約半数にとどまる。避難場所の確保も同様で、対応が遅れている。
役場や警察、消防署など、重要な防災拠点が、津波の襲来予想地域に集中した自治体もある。
予算も人員も限られた中で何に優先的に取り組むか、政府も自治体も知恵を絞らねばならない。
2011年9月29日(木)01:10 読売新聞
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Posted by おだっちの菜の花油 at 07:46│Comments(0)
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