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2009年11月06日

ふるさと上ノ国町を元気にさせたい

 財団法人・北海道農業改良普及協会より、「天の川・菜の花プロジェクト」の取り組みについて原稿依頼を受け、同協会が発行する「農家の友」2009.11月号に掲載されました。



 「天の川・菜の花プロジェクト」の思い

 景観作物として菜の花を咲かせ楽しんでもらい、ナタネ油を搾り、特産品をつくり、搾りかすを堆肥として土に返す。食廃油を回収しトラクタ-や建設機械のエコ燃料を精製する。100%資源循環型農業への取り組みの支援活動を目指します。

   天の川・菜の花プロジェクト事務局長・尾 田 孝 人



            今年5月に開花した菜の花

  ◆ふるさと上ノ国町を元気にさせたい

 柳原直昭氏(大同建設代表取締役)と私は、常日頃から生まれ育った我がふるさとの上ノ国町を、すこしでも元気にできたらと語り合っていました。柳原氏と仕事関係の知人である小竹利明氏(日函環境サ-ビス株式会社代表取締役・函館市)から、函館市内で一部閉鎖中のゴルフ場に「菜の花」でも植えようかとの話を聞き、その「菜の花」を上ノ国町に咲かせてたら、潮害からお客さんを呼ぶことができるのではないかとの想いになりました。
 このような思いから準備に取りかかり、今年1月30日「天の川・菜の花プロジェクト」を、町内の農業者4人、1農業生産法人、3異業種団体と1個人、上ノ国町と檜山農業改良普及センタ-が支援行政機関として参加し設立されました。

 「天の川・菜の花プロジェクト」の活動は、①上ノ国町に菜の花を咲かせて観光客に楽しんでもらう。②なたね油を搾って地域の特産品を開発する。③絞りかすを飼料や堆肥として土に還元する。④「菜の花栽培農家」の支援や食廃油を回収し、トラクタ-や公用車、建設機械に使用するなど環境にやさしい燃料を精製する「新規企業」の「まち興し事業」への支援活動を目的としています。
 8月末現在の「プロジェクト会員」数は、個人・団体会員併せて150人となっています。

  ◆暗中模索の中、各地を視察・調査

 プロジェクト会員農家の私たちは、初めてナタネを農作物として栽培する目的の第一として、景観作物として菜の花を咲かせて見せることを実証することにありました。
 栽培実証の中で菜種で、「菜の花」を咲かせて楽しんでもらい、さらに「蜂蜜」採取も考えました。

 ナタネを収穫して「ナタネ油」を搾ったら、町の新たな特産品にもなる可能性があります。「搾りかす」は堆肥として畑に返して土づくりに活用できます。「食廃油」を回収し、精製後にBDF燃料(バイオデイ-ゼル燃料)としてトラクタ-や建設機械などのエコ燃料として使用できたら、100%利用できる資源循環できる環境にやさしいものになります。これが実現したらわが町で初めて循環型農業ができることになります。プロジェクトの初期計画として5カ年で取り組むことにしました。

 町内で農作物としてナタネを栽培したことがありませんでした。そこで平成20年6月初旬に、菜種栽培面積日本一を誇る滝川市内の菜種畑の視察と、滝川なたね生産組合のなたね製油施設も見学してきました。

 「まちを元気に」との想いいっぱいの私たちは、菜種栽培の基本的な知識もない暗中模索の中で行動しているときに、昨年4月、留萠支庁管内で「オロロン菜の花ネットワ-ク」の組織活動を、指導援助していた高橋義雄氏(檜山支庁・檜山農業改良普及センタ-次長)が、人事異動で檜山農業改良普及センタ-赴任しました。

 同年8月、町産業課担当職員や高橋次長や清田雅明調整係長など、檜山農業改良普及センタ-の指導援助を受け、また同行をいただきながらナタネの知識を得てきました。上ノ国町で初めてナタネ栽培する畑地は、町営八幡牧場内(標高160m)で海岸から1キロメ-トル余りの採草地が候補として上がりました。

 「NPO法人・あきた菜の花ネットワ-ク」鈴木事務局長より取り組みの説明を受ける。


 新規畑地は塩害の被害が一番の課題となると考え、同年8月下旬に「NPO法人・あきた菜の花ネットワ-ク」代表石田哲治氏(秋田運送株式会社代表取締役)を訪問しました。鈴木秀雄同ネットワ-ク事務局長の説明を受け、秋田県内での耕作放棄地や遊休農地でのナタネ栽培、秋田県立大学と協働で秋田港内埋め立地での、塩害実証栽培デ-タ-を知ることができました。

 また、同県立大学教授から実証試験結果の説明をされ、上ノ国町の塩害被害については、なんら問題のないことに確信を得ました。

「オロロン菜の花ネットワ-ク」立野正一氏より取り組みとBDF精製をする製油機の説明を受ける。


 更に10月、留萌市「オロロン菜の花ネットワ-ク」の中心的役割を担っている、立野正一氏(株式会社・正喜商会代表取締役)を訪ね、オロロン菜の花ネットワ-クの取り組みと、正喜商会が製作した食廃油をBDF精製する製油機を拝見しました。

       農業生産法人「中野ふぁ-む」の中野代表


 その後、滝川市内の農業生産法人「中野ふぁ-む」の中野代表ともお会いし、中野氏から20数年間に亘るナタネ栽培経験からの、栽培技術についてアドバイスを受けました。



         8月22日播種して10週目の菜の花

  ◆「菜の花種まき」「なたね油の生しぼり」体験会開催

 平成20年9月5日~6日、私の畑地と町農業指導センタ-内の畑地に20aあまりのナタネの無肥料試験栽培を始めました。今年5月ゴ-ルデンウイ-クから菜の花が咲き始め、中旬には満開となり5月末に菜の花が咲き終わりました。町民の皆さんや農家のみなさんが町内で初めて見る真っ黄色な菜の花に驚き、大きな興味と関心を持たれたところでした。

 7月20日からナタネの収穫作業を行い脱穀選別の結果、10ア-ル当たり350kg以上の収穫となり、当初計画の200kgを大幅に超えた収穫量となりました。「天の川・菜の花プロジェクト」では、より多くの町民の皆さんに菜の花に関心を持っていただくために、8月22日「菜の花種まき」「なたね油生しぼり」体験会を実施しました。町内の保育園児や小中学生、町内外の菜の花に関心ある皆さん60人以上が集まり、盛大に体験会を実施することができました。


    「菜の花種まき」紙コップに穴をあけて種を振り落として播種

 「種まき体験」は、紙コップに穴をあけて振り落として蒔いてもらいました。初めての菜の花の種蒔き体験で、皆さん一心不乱脇目もふらず真剣に種を蒔いていました。
 「なたね油の生しぼり」実演会では、小さな種一粒一粒を搾油機に入れ、絞られて行く姿を目のあたりにして、子どもから大人までびっくりしていました。搾りたてのナタネ油の匂いをかいだ小学生が、「大根のような匂いがする」などと話していました。

「なたね油の生しぼり」体験。小さな種からナタネ油が搾り出され、こどもも大人もびっくり


 天の川・菜の花プロジェクトでは、参加者の皆さんが自分で播いたナタネは皆さん個人の物として、間引きをして食べたり、来春には「菜の花芽」を摘んで天ぷらなどにして食べていただくことにしています。7月下旬には刈り取って、ナタネ油を搾ってもらうことも計画しています。
 
  ◆輪作体系確立にナタネを導入

 体験会当日、町営八幡牧場内の採草地を畑に起耕整地たした約4haと、農家の遊休農地1.2haに播種しました。遊休農地としていた農家から、「農地の賃貸料は無償でいいので、ぜひナタネを播いて菜の花を咲かせてほしい」と要望されています。

 上ノ国町は水田総面積728haうち325haが転作され、大豆、牧草、小麦、ハト麦と特産品のキヌサヤエンドウなどが主に作付けされていますが、輪作体系確立のためには新たな農作物の導入が必要とされています。
 
  天の川・菜の花プロジェクトの会員農家が、昨年から取り組み始めたナタネ栽培は、上ノ国町の新たな農作物として、さらに地域資源活用循環型農業形成の初めての試みになります
 農業者の皆さんは、今日まで一貫性のない国の農業政策の狭間で、水田転作交付金をよりどころにせざるを得ない農業経営を行っています。危険を犯してまで自ら率先して新規作物栽培に取り組んでいこうと考えても、町内の農家にはあまり体力がないのも事実です。

  ◆異業種の協力なしにはプロジェクトは成功しない

 「天の川・菜の花プロジェクト」会員の農家は、個人、異業種団体で構成されている異業種会員の支援を仰ぎながら、栽培からナタネ油生産加工まで取り組みをしています。それらを実証していくためには、異業種会員の方々が新たに農業参入の下で、農家にはできない部署の一翼を担ってもらうことが大きな課題と鍵になっています。その実現が、農業者が積極的に輪作体系確立の一作物として新たに菜種栽培に取り組んでいける確信となることでしょう。



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Posted by おだっちの菜の花油 at 22:04Comments(1)思  い